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家賃の増額を求められた!借主の対処法について解説

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借りている部屋の更新を行うタイミングなどで、家賃の増額を求められることもあります。「税金の負担が増えたから」「物価が上がったから」などさまざまな理由で増額は起こり得ます。

借主としてはこの増額にどう対処すべきでしょうか。増額を断ることはできるのでしょうか。

当記事ではこのような疑問を解消するため、対処法について解説します。

 

家賃の増額は拒否もできる

家賃の増額を求めること自体は基本的に違法ではありません。この時点では交渉を持ち掛けたに過ぎないからです。

ただし契約内容を変更することになりますので原則として増額を強要することはできず、契約相手である借主の同意が必要とされます。

つまり部屋を借りている方としては増額を求められたとき、それに納得がいかないのなら「拒否をすることも可能」ということです。まずはこの点を覚えておきましょう。

 

増額を求められたときの対処法

増額を求められたとき、反射的に拒否をしたり無視をしたりするのではなく、一度検討をしてみてください。なぜ増額を求めているのか、いくらの増額を求めているのかを確認し、よく考えてから返答をしましょう。

今後も住み続けるのなら家主と良好な関係が築けている方が良いです。そのためにも誠実な対応を取るよう心がけましょう。

通知内容の確認

まずは通知内容をチェックします。

家賃増額の理由が具体的に記載されているかを見てみましょう。「周辺の相場上昇」「固定資産税の増加」「建物の修繕に費用がかかる」などがよくある理由です。
というのも賃貸に関する契約では多くの場合借地借家法という法律が適用され、同法にて賃料の増額が請求できるケースが次のように定められているためです。

  • 土地建物にかかる固定資産税やその他の負担が増大した
  • 土地建物の価格上昇やその他経済事情が変動した
  • 周辺の建物と比べて家賃の額が不相当となった

増額の根拠が明確にされていないときは家主に根拠の説明や資料の提出を求めましょう。そうして増額請求が法律上の要件を満たすかどうかを吟味します。法的な判断については司法書士に相談すると良いです。

賃貸借契約書の確認

次に、家を借りたときに取り交わした「賃貸借契約書」を探し出して内容をチェックします。

その契約書に、家賃の増額に関する条項がないか見てみましょう。あまり設けられる例はありませんが、もし「ある期間中の増額について禁止する旨」を定めた特約があるのなら、当該期間中の増額は当然に拒否できます。

増額後の家賃の評価

増額禁止特約がなく、借地借家法上の問題もなければ、増額後の家賃が正当な額かどうかを評価していきます。

その際参考になるのが周辺エリアでの相場です。不動産ポータルサイトを活用し、近場で、面積や築年数等の条件が近い物件を探してみましょう。不動産会社にも相談するのも良いです。より適正な相場を把握することができます。

明らかに相場を逸脱した金額になる場合、基本的に増額に応じなくてかまいません。

家主と交渉する

「増額に応じる」「増額に応じない」、あるいは増額に応じるとしても「通知された金額を受け入れる」「増額の幅を小さくしてもらう」などさまざまな選択肢が考えられます。

また、増額に正当な理由が認められる場合でも「増額の時期を変えてもらう」「家賃を上げる代わりに更新料を免除してもらう」などの交渉を行うことも考えてみましょう。

一方で増額を拒否した場合、その後の家主側の出方によって対応が変わってきます。拒否すれば多くの場合増額を諦めてくれますが、増額のために調停や訴訟の申し立てをしてくるケースもあります。

 

増額に応じないと更新できない?

家賃の増額に応じなくても違法ではありません。そして増額に応じなかったことのみを理由に更新ができなくなることもありません。

そこで一方的に「更新後の家賃は金○○万円」などと通知をしてきたとしても、増額の拒否によって更新が不可能となることもないのです。意図的に増額が必須であるかのような書き方をしている例もありますので注意が必要です。

「家主側が法律上正当に更新を拒絶するのはハードルが高い」という事実も知っておくと良いです。遅くとも期間満了の半年前には更新拒絶に関する通知を出さなければならず、さらに更新拒絶に「正当事由」がないといけません。
そして正当事由とは「賃料の不払い」「無断の改装」「乱暴な使用」「老朽化に伴う建て替えの必要性がある」などの事由をいいます。さらに、その前提を満たしたうえで家主による立退料の支払いをもってようやく更新拒絶が認められる傾向にあります。

 

対応にあたっての注意点

家賃の増額を求められ、家主とコンタクトを取るときは、以下の点に注意してください。

  • 感情的に反論しない
  • 請求を無視しない
  • 交渉中でもこれまで通りに家賃は支払う
  • わからないことや不安があるときは司法書士に頼る

無理に増額に応じる必要はありませんが、交渉中で今後の家賃がまだ確定していなくても、これまで通りの額で家賃は支払わないといけません。家賃を滞納してしまうと、滞納を理由に賃貸借契約を解除されるおそれがあります。

もし家主が「新賃料以外は受け付けません」と主張していても滞納すべきではありません。供託制度を利用して家賃を支払ったことにする必要があります。

このような制度のことや法律上のルールのことなど、増額への対応に関してわからないことも出てくるかと思います。そんなときは自力で対応しようとせず司法書士へご相談ください。