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遺留分侵害額請求について司法書士が対応できる範囲

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遺言によりほとんどの財産をもらえなかった相続人は、遺留分を主張して金銭を請求できることがあります。相続に関しては司法書士に相談をすることが多いですが、遺留分侵害額請求に関してはサポートできることが限られていますのでご留意ください。

遺留分に関して何ができて何ができないのか、司法書士による対応可能範囲を当記事でご紹介いたしますのでご一読いただければと思います。

 

司法書士の基本的な業務

司法書士は、法律・登記に関して幅広くサポートを行うことができます。例えば次のような業務に対応可能です。

  • 遺産分割や相続人の調査など「相続」に関する業務
  • 身内で財産を信託する「家族信託」に関する業務
  • 任意整理や自己破産など「債務整理」に関する業務
  • 「不動産登記」に関する業務
  • 「会社の登記」に関する業務 など

依頼主ご本人に代わって書類を作成したり、必要書類を集めたり、裁判所での手続を行ったり、法的な制度に広く対応しています。特に不動産や会社に関する登記業務は独占業務であるため、司法書士は「登記のプロ」と説明されることもあります。
相続においても登記が必要となるケースがありますので、遺産に不動産が含まれているときは司法書士をご活用ください。

 

遺留分侵害額請求についての対応は限定的

相続に関連して「遺留分侵害額請求」が行われることもあります。法律上定義されている遺留分制度※に基づくため、相続に強い司法書士であればこの請求に関しても知見を持っています。

 

※遺留分制度とは

「遺留分」とは法律上最低限留保されている相続分のこと(最大で遺産総額の1/2。共同相続をするときは遺産総額の1/4ないしそれ以下の割合が留保される)。

亡くなった方の妻や夫、子、親などは相続人として遺産を受け取る権利を持つが、遺言書が作成されていると相続人以外が全財産を持っていってしまうこともある。そんなときでも遺留分があることを主張して、遺産を受け取った人物に対し、取得できていない遺留分相当額を請求することができる。このときの請求を「遺留分侵害額請求」と呼ぶ。

 

しかしながら、金銭の支払いを求めるなど、人と人の争いについて代行をすることは基本的に司法書士の業務範囲外です。そのため遺留分侵害額請求のようなトラブルについては弁護士を活用するのが一般的です。

もし、手続を経て法務大臣から認められた「認定司法書士」であれば請求額140万円まで取り扱い可能です。

ただ、少額のトラブルなら司法書士に依頼できるものの、遺留分侵害額請求ひいては相続に関するトラブルでは金額が大きくなりやすく、司法書士が交渉の代理人になることは難しいと思われます。

遺産は亡くなった方の全財産を指しますので、その総額が数千万円、1億円を超えることもあります。
仮に遺産総額が1億円で、配偶者・長男・長女の3人が相続人になるとすれば、各々の法定相続分はそれぞれ5,000万円・2,500万円・2,500万円です。遺留分も2,500万円・1,250万円・1,250万円と高額です。遺留分侵害額請求を行うとき、金額が140万円を超える可能性も高いと思われます。遺産総額が2,000万円であっても数百万円以上の請求額となる可能性が高いです。

 

遺留分制度の相談対応は可能

遺留分侵害額請求の対応は難しいですが、遺留分制度についての相談や質問に対応することは司法書士でも可能です。

「遺留分って何?」「どれくらいの遺留分がある?」といった疑問を解消し、計算をしてもらい、具体的な金額を把握することもできるでしょう。

なお、請求や交渉に関することでなければ、相続制度全般について司法書士に依頼可能です。次の事項に関する仕事を頼むことができます。

  • 遺言書の作成
  • 生前贈与
  • 相続人の調査
  • 遺産分割協議書の作成
  • 相続登記
  • 遺言の執行
  • 相続放棄や限定承認 など

遺留分放棄も司法書士ができる

遺留分に関して代行できる手続もあります。

それは「遺留分放棄の手続」です。

遺留分は法的に認められた最低限の遺産の取り分ですが、あらかじめ本人の意思に基づいてこれを放棄することもできます。
例えば遺言者が確実に遺贈(遺言書に基づく財産の譲与)を行いたい場面で、後々遺留分侵害額請求によってトラブルが起こらないよう、遺留分の放棄を求めることがあります。

ただ、遺留分の放棄も簡単ではありません。放棄の無理強いを防ぐため、家庭裁判所での手続が求められているのです。申立書、財産目録、戸籍謄本、費用などを備えなくてはなりませんし、申立後の審問、証明書の発行など、手間も大きいです。

この場面で司法書士を頼ることができます。手続を代わりに進めてもらうことで円滑に、安心して遺留分の放棄を行うことができるでしょう。

 

専門家選びのポイント

専門家にもできること・できないことがありますので選ぶときに悩むかもしれません。

相続については基本的には司法書士を頼って問題ありませんが、「揉めている」「お金の請求をしたい」といった場面では事前に確認をしておきましょう。依頼を検討している司法書士に直接聞いて、対応ができるのか、どこまでなら対応できるのかを明確にしておくべきです。

また、専門家を探すときは「できない業務をはっきり言ってくれるかどうか」にも着目してみましょう。司法書士によって得意な業務や不得意な業務がありますし、法律上取り扱いができない業務もあります。この点を明確にしてくれる司法書士の方が安心です。